Adagio
有紗は宇美から勧められて、小さなテーブルを挟んだ向かい側に座った。

「さて、なぜここに呼ばれたでしょう」
 固い表情を崩さないまま、宇美が訊いてきた。

「首藤さんの、ことで……呼ばれたんだと思います」
 しどろもどろになりながら、有紗は俯いた。

「分かってるじゃない。分かってるってことは、思いあたる節があるってことだね」
「多分、教える順番のこととか」

「私はさっき、別に私の言ったとおりにしなくていいって言ったよね」
「首藤さん、わたしのこと何か言ってました?」

 訊いていることが全く見当違いなのか、宇美は何も答えなかった。代わりに、テーブルの上に先程首藤が提出したばかりのクリアファイルをぽんと置く。

「綿貫さ、チェックもしてないでしょ」
「……はい」
「ちょっとそれ見てごらん」

 有紗はクリアファイルから紙の束を取り出した。一枚目を見てすでに気になることがあったが、二枚目、三枚目とめくっていく。
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