Adagio
(これじゃあ、新人事システムが入る前に、わたしなんていらなくなっちゃう)

 首藤の横顔を見ていると、みぞおちの辺りがきりきりした。就活以来だ。首藤が席に戻ってきたタイミングで、今度は宇美から有紗に声が掛かった。

「綿貫、ちょっといいかな」
 この状況で呼ばれるとなると、いい予感などひとつもなかった。

「ごめんなさい、首藤さん少し待っててくださいね」
 コピー用紙の補充を首藤に託して、有紗は早足で宇美の元へ行く。

「ちょっと、向こうで」
 宇美はすぐさま椅子から腰を浮かせた。指しているのは、採用研修でよく使う水槽のようにガラスで仕切られた個別ブースだ。

 思い当たるのは首藤の指導のこと以外にはなかった。宇美はすでに何らかのジャッジを下したのかもしれないが、それならそれで良かった。他の人間に担当が代わってくれれば肩の荷も下りる。
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