Adagio
「そう。人間の手が入る以上ミスをゼロにするのは難しいけど、せめて相手に対して責任を持った仕事をしたいじゃない。提出してもらっているのはただの紙一枚でも、この数字は単なる数字じゃないんだよね。

社員ひとりひとりの頑張りに対して支払うべき対価なんだって考えたとき、人事部のひとりの人間が千人以上に対する責任を背負うって大変なことだよ」

 宇美の言葉に、有紗はただ頷いた。

「入力なら首藤さんでも出来ると思ってそのまま任せたんだろうし、確かに出来てるのかもしれないけど、わたしが教えてあげて欲しいって思ってるのは、そういうところなのよ」

「はい……」

「綿貫は確かにまだ二年目だけど、二年目だからこそ初心を忘れずに仕事が出来てると思うんだ。私は首藤さんに、こなすだけの仕事をするのが人事部だと思って欲しくないわけ。

異動に関しても配属に関しても最終権限は各部長だし、『人事部って何してるの?』なんて他所から言われるくらい地味だけど、とても大切な仕事を請け負っているんだってこと、綿貫は知ってるでしょ?」
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