Adagio
『Hello, Alissa』
『こんにちは』

 有紗は画面の下に表示されたキーボードで返事を打つ。

『Alissa、今急いでる?』
 言語を判別して、自動で日本語に切り替わった。

『今昼休みだけど、終わったらまた仕事』
『大変だね』

 有紗はイエスともノーとも言わなかったが、うまく判別したらしい。どうやらこれはAIとチャット感覚で会話を楽しむゲームのようだった。

 有紗は自席で食事を取りながら、他愛のない会話をいくつか繰り返した。

 AIチャットというのは、見当違いなもの、もしくは、当たり障りのない返事以外できないものだと思っていたが、これはそうでもないらしい。

相手が機械だと思うと気を遣わずに、訊かれるがままにするすると話をしてしまう。気付けば、有紗は悩み相談をしていた。

『今日中に終わらせないといけない宿題があって、でも、まだ答えがわからないの』

『それは何かのレポート?』
『ううん。でもそれに近いかも』
< 93 / 131 >

この作品をシェア

pagetop