Adagio
『ノー』

『例えばその人が短期間で残せるものが、長期間働いている人以上なら、前者を雇用するべき?』

『イエス、アンドノー。Alissa、人が働くことで手に入れることができるものは』

 周りから徐々に中央にある答えの壁を崩してゆく。時間を忘れてInnocenceとのやり取りに集中していると、いつの間にかランチから戻った首藤が、スマートフォンの画面を覗き込んできた。

「綿貫さん、どうしたんです? 顔がものすごく真剣」
「おかえりなさい。……実は今ちょっとAIとお話してるんです。すごいんですよ、とってもお利口なんです」

 有紗はデスクの上にスマートフォンを置いた。チャットログを読みながら、首藤は感心したように「へえ」と声を上げた。

「これって、人間相手よりも機転が利いた会話も出来そうじゃないですか? 内容って何でも大丈夫なんですか? 恋愛相談とかしたらどんなアドバイスくれるのか興味があるなあ。ちょっといいですか?」
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