極上御曹司の愛妻に永久指名されました
「……なんとかしてうちの店を残す方法はないんですか?」
藁にもすがるような思いで聞けば、彼はうっすらと口角を上げた。
「なくもないなあ」
黒沢さんの返答を聞いて、真っすぐに彼を見据えた。
「どうすればいいんですか?」
「紫ちゃんが俺の愛人になれば、この計画から真野珈琲店を外すよう指示を出そう。なんせ俺は専務だからね」
愛人……。
その言葉に絶句する。
私には恭一がいるのに黒沢さんの愛人になるなんて……そんなの無理だよ。
でも、私が彼の愛人にならなければ、うちのお店はなくなってしまう。
ああ……もうそれしか方法はないの?
「愛人以外の方法は……」
黒沢さんに再度確認したら、「ないな」と冷たく返された。
「君のご両親はお店が立ち退きになったら、さぞかし落胆するだろうね」
黒沢さんは同情するように言うが、その言葉には心が全然こもっていなかったし、彼の目は笑っている。
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