元カノと復縁する方法
辞令発表の面談を終えて旭が席に戻ると、これまでなら「寂しいですー!!」と大きな反応を示していたであろう橘が、ぐ、と何かに耐えるような顔をして鬼気迫る勢いでキーボードを叩いている。

あの日から、橘は甘えるような態度をやめた。自分の業務を漏れなくこなそうとするだけではなく、早めに帰れそうな日には「旭さん、何かお手伝いできることありますか?」と聞いてくる。(その度に、おい、俺にもたまには聞けよ、と颯に突っ込まれているけど)まだまだ完璧ではないものの、彼の中で何かが変わった。

でも、今回ばかりは何を考えているのか聞かなくても分かる。旭はクスリと笑い、声をかけた。

「寂しいね。」

その途端、口がへの字に歪んで、ブンッと音が鳴りそうなほどの勢いで縦に頷く。
もちろん旭も、他のメンバーも桐山を慕っていたが、橘は桐山に特によく懐いていた。

「異動は、何回経験しても、慣れないね。」

そう言うと、「送別会、企画します。」とへの字の口のまま言った。
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