好きって言って。
「じゃ、俺、本気だすね」

「……え?」

「この旅行中に、ぜったいひな落とすから」

目が点になった。

「……落とすからって……ちょっと、なによそれ」

焦ってしどろもどろになる。

「俺、17年間、ひなしか見てなかった」

「…………」

「諦めなきゃいけないかもって、そっちに頑張ったときもあったけど……やっぱり、無理」

さっきみたいな意味ありげな、じゃない。

まっすぐに私を見つめて、りぃとがきれいな笑みを浮かべた。

「俺、ひなじゃないとダメ」

胸の奥を鷲掴みにわれたような感じ。

りぃとの瞳から逃げられない。

「出掛けに、兄貴にも宣戦布告してきたんだけど……意味なかったみたいだね」

「エイトに?」

「うん。ひなは俺がもらうから、手出すなよって」

「……エイトは、なんて?」

そんなやりとりをしてきただなんて。

恥ずかしすぎる。

「気になるの?」

「気になるっていうか……いや、なるわよ。今度エイトに会ったらどんな顔すりゃいいのよ」

「普通にしてていいんじゃない?」

しれっと言うりぃとを睨んだ。

「アイス溶けちゃうよ」

今度はりぃとにスプーンを差し出された。

それをパクっと食べたのは、絆されたんじゃなくて、やけになったからだって自分に言い訳しながら。
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