日向はキミのもの。
しばらく経って、考えることもやめて壁にもたれた。
寒い。
トイレにずっと居ることはいい気分ではない。
というか、私のことを気にかけてくれる人が1人もいないという現実を受け止めるのは簡単なんだけど、
大体の人は授業を遅れてきた有田さんが犯人ってことを分かってるのに、先生さえ助けに来ない。
どういう学校だよ・・・
「はぁ〜・・・」大きなため息を1つつくと、
速いテンポの足音が聞こえてきた。
その音はだんだんと近づいてくる。
そして、ピタッその足音は止まった。
「・・・日向ちゃん、いる?」
壁の奥から聞こえる声、それは・・・
「ゆぅ・・・き・・・?」
「やっぱり!
出ておいで」
「ふ、服透けちゃってるから出れない・・・!」
「え、どういうこと???」
そうか、優希は私が水をかけられたことを知らないんだもんね。
「ぬ、濡れてるの」
「えっ、もしかして 水かけられ・・・た?」
「ち、違うよ?
私、おっちょこちょいだから転んじゃって、その拍子に上から水の入ったバケツが落ちてきちゃったの(笑)」
「・・・
そっか!じゃあどうしよう」
嘘ついてることバレバレだろうけど、何も聞いてこない優希は優しい。
「それより授業は?大丈夫なの??」
「大丈夫大丈夫!」
「ごめんね。」
「気にすんな!
それより、風邪引く前に服をどうにしかしないとな・・・。」
これ以上迷惑をかける訳にはいかない。
「あ、そうだ!
つばさちゃん呼んでくる!」
「いいよ、いいよ!そんなことしなくて!!
つばさちゃん勉強中でしょ?迷惑になっちゃう」
「でも・・・」
「なんとかするから!優希も戻りな!」
「・・・わ、分かったよ。
授業終わったらまた来るから。
あっ・・・これだけやるよ」
トイレの入口辺りに投げ込まれたのはジャケットだった。
こんなところ汚いのに・・・
「それでも羽織って待っといて」
「ありがとう」
「おう!じゃあまた後で!」
「うん!待ってる。」