君と過ごした冬を、鮮明に憶えていた。
新しい家族

【1】

「さっさと起きなさい」
 階下から聞こえた母の声。もうとっくに起きているというのに。
 身支度を済ませ、鞄を持って階段を下りた。
 あれから5年。私は17になり、公立の高校に通うようになった。
「早く食べちゃって」
 椅子に座れば、たまごがのせられたパンを差し出され、急かされた。
 5年が経った今、父に暴力を振るわれていた頃の気弱な母の姿は見られない。
 むしろ、粗々しい。全てのことに対して雑になっていた。もっとも、整った顔立ちは所々に皺が入っていたとしても、年不相応だ。
「ふわぁ~。おはよー」
 食べ始めたところで扉から出て来たのは、義妹だった。義父方の娘。私にとっては義理の妹になる。
「邪魔」
 先程起きたと言わんげな義妹に容赦なく吐き捨てたのは、義兄だ。義妹の後ろから顔を出す。こちらも義父方で、義理の兄となった人だ。...とは言うものの、義兄の場合、私と同い年だった。私の方が遅生まれだということで”義兄”になっているだけである。
 義妹は紗和(さわ)。義兄は倖也(ゆきや)。両親はこの2人に滅法甘い。だからといって2人を憎むなんていうことはしないけれど。
「本当、兄貴朝機嫌悪いよねぇ~」
 紗和は中2で、ソフトボール部だった。
「急いでんだ。お前と違って」
 そして倖也は高2でサッカー部。見るからに紗和に冷たいが、同情だか何なのか知り得ないけれども私への当たり方は優しい。
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