君と過ごした冬を、鮮明に憶えていた。
「...なに」
 気持ちの表れか、冷たい口調で放った言葉だった。
「冷てえ。そんなに警戒すんなよ」
 と、大笑いした。間抜けになっていたであろう私の顔に、更に笑った。
「もう何でもいい」
 小声でボソッと。でも、彼にはちゃんと聞こえたらしい。
 その証拠に___
「おう」
 朗らかに笑う。
< 16 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop