君と過ごした冬を、鮮明に憶えていた。
愛の無い家庭

【1】

「要らねえんだよ、こんなの!」
 -ガッシャーン
「ご、ごめんなさい。今すぐ片付けます...」
 汚い部屋。
 酒の匂いで充満した冷蔵庫。
 私は、そんな檻の中で育った。
「おい!酒も切れてんじゃねえか。ふざけんなよ!!」
 ゴツゴツした腕を力任せに振るい、重そうなそれを母さんに投げ付けた。
 -ゴッ
 鈍い音を立てて、母さんの後頭部に当たった。
「い...っ!」
 割れた皿を拾っていた母さんは、後方に倒れ、頭を押さえていた。
 指の間からは、赤いものが垂れている。
 こんなのは、日常茶飯事。
 家ではよくあることだった。
「くそ......ん?」
 椅子に腰掛けたところで、父さんはあるものに目を留める。
「何見てんだクソガキ、あぁ?」
 私だ。父さんは私の視線を感じて、また不機嫌になった。
「...!」
 こちらにゆっくりと近付く父さんを見、母さんは焦った顔をした。
「あなた!お願いです!どうか、冬にだけは、手を出さないで下さ...」
 言いかけて、母さんは後悔したんだと思う。
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