君と過ごした冬を、鮮明に憶えていた。

【3】

「じゃあこの問題の答えを...荒田、答えてみろー」
 先生のそんな声だった。授業中でさえも朝の出来事でボーッとしていた私を引き戻したのは。
「え」
「いいから立てー」
「...」
 不真面目極まりないな、自分。こうとなれば聞いてませんでした、としか言う他ないが、うちの担任怖いんだよなぁ~。
 呑気にそんなことを考えていたときだった。
 斜め前の机に、答えが書かれている紙があったのに気が付いたのは。
「......」
 2度は来ない神からの助け!そう思った私は、即座にその紙の答えを口頭で丸写しした。
「えっと......Eの方程式です...」
「正解ー」
 とりあえずは胸をなで下ろしたところ。速やかに着席して思う。
 よくよく考えてみると、確か紙が置いてあったのは、今日欠席の人の机だよね。
 HR中もずっと上の空だったから、だからというわけでもなく、単に斜め前の席が誰もいなかったからの結論だ。しかし、その結論に至るのはいいが、では一体、誰が何のためにその紙を置いたというのか。
 私はもう一度紙が置かれてあった机を見る。
 すると
「あ、れ...」
 もうなかったのだ。
 不思議に思いつつも、授業に集中しなくてはと、視線を前に戻す。
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