君と過ごした冬を、鮮明に憶えていた。
「じゃあ、次」
 颯爽と次の問題がやってきた。みんな、教科書を見て何やら俯いている。どうしたのだろうと、自分も教科書に目を落とす。
「...」
 瞬間、怪訝。
 みんなが俯いた理由がわかる。だって...
「大和ー。答えろー」
「うげっ...」
 『超』難しいから。
 運悪く当たってしまった大和____あいは、顔を歪めている。
「えーっとー...分かりません」
 正直だなあ。
 あいがそう答えると、先生は
「なら......入沢」
 と言う。
 ホッと一息ついたあいは即座に座った。
 始終、見ていたが、気になることが一つ。
「...ねえ......あれ誰?」
 左隣の、林野に聞く。
 私の右隣の奴は誰かと。
「38」
 迅速に起立し、迅速にこたえる。
「お前、話聞いてなかったのか?転校生だよ。入沢蛍って奴」
 ”入沢蛍”
 その名前は、ひどく膨大で、あまりに美しい響きだと思った。
「そこー。何話してるー」
「あ、す、すいません!」
 HR中に紹介があったのか。
 ボーッとしていたのだから、知らないのは仕方がないか。
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