蒼葉先輩はいつもわからない
1.

新しい季節


蒼葉先輩に出会ったのは、桜の咲く4月の入学式。
まだ真新しい制服とピカピカのローファーで門をくぐった。
張り出されているクラスわけを見て手を取り喜ぶ女子、未だ名前を見つけられないのか目をこらす子。
そんな中私は中庭に出向いていた。
校舎に囲まれた丸い中庭。真ん中に大きな桜の木が1本、華やかに花を咲かせながら立っている。その下にはスケッチブックを持った男の子。
風がふわりと髪を揺らす。
あまりにも綺麗な立ち姿に、私は思わず近付いた。

「あの、」

思いもせず口から出た声はあまりにもか細かった。

「…こんにちは。新入生…?」

振り返ったその人は、ネクタイの色が緑色の2年生。茶色のふわふわしたくせっ毛の髪の毛に花びらが数枚乗っている。

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