あなたの大切な人の話
言われた電話番号をすぐにダイヤルに入力し、十一桁埋まるとすぐに発信をタップしました。すると彼女の携帯電話が振動します。

「ふふ、はい」

すると彼女は通話ボタンをタップし、電話を耳にあてたのです。あなたの方は電話を耳には当てていませんでしたので、彼女の声を電話越しに聞くことはありませんでした。
もちろんあなたは、彼女のお遊びに付き合うことなどしないのですが、どういう心境の変化でしょうか、少し表情を緩め、彼女の様子を見ていました。

「俺の番号です」

そう言ったときのあなたはとても穏やかでした。
彼女は満面の笑みでお遊びをやめると、すぐにその番号を登録しました。あなたの方も、同じくかけた番号を『藍川 菜摘』と登録します。

「お名前はどういう字ですか?」

彼女の問いに、ちょうど電話帳の画面を開いていたので、あなたは電話帳の自分のページを開き、彼女に見えるように向けました。
彼女は頷いて、また忙しくタップし始めます。ですが数秒でそれを終ると、携帯を両手の中にしまい、リラックスして背もたれに頭をつけました。
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