君は友達。

私は一人

静かに起き上がった。

また空を見て寒そうだと苦笑を浮かべた。

苦笑でも笑えるんだ、と安堵する。

そう安堵できることはあまり良くないのかもしれない。

目線をデジタル時計に送ると6時20分。

よかった、間に合うと確信して支度をする。

11月27日。

毎日が異様に早く過ぎ去ってしまうものだから、日にちを確認しなければ忘れてしまいそうになる。

昨日、を考えたら悲しくなるから考えない。

だって、思い出せないんだもん。

靄がかかったように、記憶が霧の中を深い霧の中を歩くような。
そんな感じ。

嫌いなら嫌ならしない方がいい。

絶対にしなくちゃいけないわけじゃないなら。

これ以上、私に苦しむ必要があるというのか。

いや、ないでしょうと自問自答につい笑ってしまう。

仕方の無い、都合のいい言葉。

自分をかわいがる言葉は甘ったれる原因の一つになり得る。

「はぁ」

全ての用意ができた。

朝ごはんは食べない主義。

だって走ったらお腹が...というより胃が痛くなる。

運動しなくても胃が痛くなるのに。

「いってきまーす...」

「なぁん...」

ローファーを履いて立ち上がると三毛猫が足にすり寄ってきた。

「ミコ...ふふ、行ってくる。いい子にしてて」

我が家の愛犬ならぬ愛猫。

ちっちゃくてふわふわしている毛、くりくりのまあるい目。

愛おしくてたまらない。

親が共働きで忙しいから今家で時間を共にしてるのはミコと言える。

ミコといれば傷が癒える。

幸せだと感じる。

だけど、昨日のミコの様子を覚えてはいない。
けど、思い出そうとはしないから平気になれる。

そっと頭を撫でてやると、ごろごろと喉を鳴らすミコを見て、少し元気が出たような気がした。

「行ってきます」

そう言って寒くて冷たい世間に今日も飛び出していく。

ーーガチャっ。

ロックした。

うちの扉と、もうひとつ。

今日も解かないようにしないと、そう思える辺り。
深層心理はわかっているようだ。

自分の細かい現状を。
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