キミに伝えたい言葉がある



でも、莉桜菜は首を横に振った。


「違うところに出来たガンは場所が悪くてね・・・治る可能性は低いんだって」
「は?」


俺は耳を疑った。
治る可能性が低い?それは、どういう意味だ?どう解釈したらいいんだ?
分かっている頭ではそれがどういう意味なのか分かっているが、飲み込みたくはなかった。
だって、それは。


「・・・あと、少ししか生きられそうにないみたい」


莉桜菜は、小さく笑みを浮かべた。
こんな時まで、彼女は笑っている。


「・・・あと、少し・・・?」
「うん」
「手術は・・・?」
「うん・・・しないと思う」
「なんで?」
「痛いのイヤだし・・・しても・・・」


ガタッと音を立てて俺はその場に立ち上がった。


「真司君?」


これ以上、莉桜菜の言葉を聞きたくはなかった。


「・・・帰る」


俺は、踵を返して莉桜菜に背中を向けた。
彼女が今、どんな表情をしているかは分からない。
莉桜菜を見ることが出来なかった。


「そっか・・・来てくれてありがとうね」


「・・・」


俺は、その言葉に返事をしないで病室から出た。
少し先の椅子に莉桜菜のお母さんが座っていた。


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