キミに伝えたい言葉がある



お互い正反対の方向に進む。


「おー、じゃあな」
「また」


手を振り、俺は赤信号で止まる。
光平が渡りきった頃に信号の色は変わって、俺は病院に向かって歩き出した。





病院にいくと、やはりというか中はとても静かだった。
病院が賑やかなんて想像もつかないけれど、独特のにおいと静寂の中、足音を立てないように俺は歩く。
小さな物音でも、病院の中は響きやすい。


莉桜菜の部屋は、今日は入り口は全開だった。
中を覗き込んでみれば、部屋の奥にあるベットに莉桜菜はいて、体を起こしてぼんやりと窓から見える景色を眺めている様子だった。


「莉桜菜」


小さな声で名前を呼んでみると、ビクッと体を震わせて、莉桜菜は俺の方を見た。


「真司君か・・・びっくりしたー」
「何見ていたんだ?」
「んー、特に。冬になるから景色も殺風景だよ」
「そうか」


俺は、莉桜菜のベットの傍らにある椅子に腰掛ける。


「ーーー終わったよ」
「そっか、おめでと」


俺は、莉桜菜にオーディションのことについて報告した。
彼女には包み隠さずどうだったか、どんな気持ちで挑んだなどと、細かく説明する。
莉桜菜は、頷きながら全部聞いてくれた。


「ーーー結果は一ヶ月以内にくるって」
「へー結構時間かかるんだね」
「そうらしい。光平は、これから緊張してソワソワずっとしているかもって」
「ははっ、彼ならそうなっているかもね」


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