キミに伝えたい言葉がある
ゆあちゃんは、上手にボールを受け取って、俺に投げてくる。
小さな体から投げられたボールは、すぐに地面に落ちて、転がりながら俺のところに届いた。
「行くよ」
「うん」
距離を考えて投げてやると、ゆあちゃんは難なく取ることが出来た。
「上手だね」
「やった!」
自分でボールがとれたことにとても喜んでいる。
ボールのやりとりを何回か繰り返すと、ゆあちゃんの様子が少し変わってきた。
吐く息が多くなっているし、疲れているようにも見える。
「ゆあちゃん、ちょっと休憩しようか」
俺は、手招きしてゆあちゃんをベンチに座らせた。
ここにいるということは、普通の健康な子どもとは違うということだ。
俺は、着ていたパーカーを脱いでゆあちゃんに着せた。
「・・・おにいちゃん、やさしいね」
「え?」
ゆあちゃんは、小さく笑った。
俺よりも何歳も年下のはずなのに、大人びいた笑みだった。
「・・・・ゆあちゃんは、何歳?」
俺は、ゆあちゃんの隣に座って聞いた。
ゆあちゃんは、ボールを大事に抱えたまま、5歳、と答えた。
「もうすぐ、6さいになるよ」
「そうなんだ」
「おにいちゃんは?」
「17歳、かな」
何だかんだ生きてきたらもう17年経っていた。
月日が流れるのは早いものだ。
「いーなー。あたしもはやくおおきくなりたいな・・・」
「ゆあちゃんもあっという間に大きくなるさ」
そう言うと、何故かゆあちゃんの表情は翳ってしまった。