perverse
翔は涙を浮かべた目でフッと余裕な笑み見せるが滑稽に見えるのは気のせい?それとも私が彼を侮っているだけ?
「兄ちゃんは今でも付き合っている女がいるんだよ」

初耳だった
私の知っている宙さんには女の影が見えないから
もしかして翔の嘘?私を宙さんに取られたくないなから?

「子供じみた嘘はダメだよ」
「何にも知らないんだ。かわいそうに。兄ちゃんはズル賢いんだよ」

翔は私の知らないさんの事を、勝ち誇った顔で言う

「話は、もう終わり?帰るわ」
「まだ終らない。聞けよ」

翔が逃げようとする私を抱きしめる
翔に包まれ懐かしい匂いが私を包む。私の中でレッドカードが出ているのに逃げられない

翔の抱きしめた腕の力が強すぎて振り払うことができない
私はどうしたら良い?

一つだけているのは『翔に流されたくない』ってこと

「わかったからその腕を離して」
「働いている病院の院長の娘と付き合っている」

衝撃の事実を聞いてさっきまでの私とは打って変わり、身体は動かなくなっている

「それで?」
「大学の頃から付き合っていて最近、その人から結婚申し込まれたらしい」
「病院の一人娘で結婚したら跡取りになるんだ。計算高い兄ちゃんが玉の輿を蹴って美波と結婚するなんてありえない」

言葉が出なかった
私は宙さんに捨てられる
目頭が熱くなり、私の気持ちとは裏腹に涙が出てくる

ここで泣いてはいけない

現実はどうであれ翔の前で動揺しているのを見られると、また付け込まれる
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