perverse
「翔の言いたい事はわかった。善処するわ」
今の私は、その言葉を言うだけで精一杯
私は下を向く
涙を堪えるだけで精一杯だったから
私はベンチから立ち上がり翔に一言の言葉をかけることもなく、一人幽霊のように歩き出した
「送って行くよ」
慌てている翔の言葉が耳には入ってくるけど反応はしない。できない
公園を出てから、ハンカチをカバンから取り出す
目頭を抑えて溜息を一つ
いつの間にか日が暮れている空を眺めるが涙でボケてしまい何も見えない
「私は幸せになれない。不幸な女」
あんな馬鹿翔に捨てられ、その兄の宙さんにも幸せをあげる振りして捨てられる
それよりも、翔に言った【善処する】って?
私にとって最善なのは宙さんと別れること?それとも結婚すること?
4年前の翔の時は冷やかしでウエディングフェアーに行っただけだから、別れても周りにはあまり迷惑はかけなかった
でも今は

再会してから1ケ月と少しだけど、話はトントン拍子に進み両方の親を巻き込んでいる
ましてやご両親が私に対して土下座をしたぐらいだから騙そうとしているなんて思えない
翔のただの我儘
それとも真実?
今の私には、どれが真実なのか探る術さえわからない

取りあえず重い足取りで実家に帰りシャワーを浴びる
食欲は全くなく思い出すだけで涙が出てくる

夜に宙さんから電話がかかってきた
翔に待ち伏せされたことを告げる
『俺が当直だとわかってワザと今日を当てて来たんだ。確信犯だな』
「そうですか」
あまり宙さんと話をしたくない私がいる。宙さんはいつもの私と違うのを察したのか
『何か言われた?』
翔が待ち伏せしたということ事態彼が何かアクションを起こすのは容易く考えられる

隠してもダメ。私は自分に言い聞かせ一部だけ話そう
「宙さんと、結婚してはいけない」
『アイツの言うことは聞いたらダメだから』
と言って呼び出しがあったため電話は切れる

その夜はいろんな思いが錯綜して眠ることができなかった
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