perverse
あれから何時間たったのだろうか?
私が寝ている寝室のドアが少し開いていて、明かりがこぼれているのと同時に女性の怒っている声が聞こえる
この声は?
一瞬ドキッとしたけど、どう考えても真寛さんの声ではない
私が起きて立ち上がろうとしたので物音がしたのか、宙さんのご両親が慌てて寝室に入って来た
ベッドの脇で跪いて私を可哀相な目で見ている
「美波ちゃん、ごめんね。こんな事になるなんて」
「私は大丈夫ですから」
「大丈夫なはずないでしょう。美波ちゃん、私達に気を使わなくても良いから。だって家族でしょう」
宙さんのお母さんの優しい言葉で目に涙がジワッて浮かぶ
いつもの私じゃない
事故のせいか情緒不安定
「こんな身体じゃ辛いでしょう?宙も役に立たないしウチ来る?」
お母さんの言葉は今の私に取っては有り難かったし、嬉しかった
そこで頭に浮かぶのは、宙さんの実家で何度か遭遇した真寛さんの顔
想像するだけでも、血の気が引いてきて顔色が変わっているのが自分でもわかる
私は理由を言うこともできないでいたけど、お母さんは察知してくれたのか
「私がここに通うから安心して」
私が今欲しい言葉をお母さんは言ってくれ、トイレに近い宙さんの書斎にベッドを運ぶよう男性達に指示をした
私が歩くのもままないから
そうして数日間の療養生活が始まった
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