breath
「そうですよね。何となくわかっていました。」

涙を流しながら、そう言う明日美はいつもの弱々しい雰囲気ではなく、少しいつもより強い口調で言っているのは気のせいだろうか?


「私……実家に帰ります。こんな環境で樹さんにご迷惑をおかけするのは良くないですし、私なら守ってもらわなくても大丈夫なんで、お気になさらないで下さい」

明日美はペコリと頭を下げ、立ち上がった

気丈に振る舞う彼女、無理しているようにも見える

俺は……確実に明日美を傷つけた

荷物を置いている部屋に向かおうとする明日美の腕を掴み、引き止める

いま、手放したら本当に何処かに行ってしまう。他の奴に取られてしまう……そんな気持ちが、俺を焦らす

「明日美……キチンと話をして決着をしたら迎えにいくから、待っていてくれる?」

自分勝手な俺が、明日美に縋るように、願いながら言った言葉に対して

「私は樹さんが大好きだから、いつまでも待っています」

と明日美はとびきりの笑顔で、涙を流しながら答えてくれた
< 192 / 657 >

この作品をシェア

pagetop