breath
私が樹さんの胸を借りて何分経ったのだろう?

玄関のドアが開く音がして、足音が聞こえる

社長が戻ってきた

私は樹さんの腕を振りほどこうとしたけど、樹さんはそうはしなかった

女の私の力では樹さんには敵わなくて、社長がキッチンに到着した時の姿は、樹さんに抱きしめられている状態だ

その姿を見た社長は

「仲直りしたか?」

保護者とも思える発言をするけど、まだ樹さんの腕は離れない

「したよ……、もう匠さんの手を借りる事はないから」

上を向くと、余裕の笑みを漏らす樹さんの表情が見える

ーーーまだ何も言ってないですよ………

私の中で、何も動いていないですし……

でも、私の気持ちを汲んだように

「樹、一度お前は両親とキチンと話をした方がいいんじゃないか?どう考えても、お前の両親が明日美にやった事は、婚約者の立場の人にすることではない」

私の気持ちを代弁するかのように、社長は言ってくれた
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