breath
たくさんお酒を飲みすぎたのかグデングデンになっている前田さんがいる
「何でしょうか?」
素面の私はいたって冷静だ
前田さんは酔っ払いのニコニコした笑顔で
「以前、樹と同じ本社勤務って聞いたんだけど、樹の婚約者って誰か知ってる?」
ここで正体を明かすべきか、それとも知らない振りをするべきか?
樹さんも会社ではあえて私の名前を出さない
出さない理由が隠したいのか、私を守りたいのか真意がわからない
もし名乗り出て二年前のように突然別れが来たら、私は仕事を失うかもしれない
もうそんな惨めな事にはなりたくない
「申し訳ないですが、存じません」
秘書らしく答えると
「そう」
うつむきながら女の表情をしている
もしかしたら、この人は樹さんの事を好きなのかもしれない

「貴方、協力してくれない?」
「何をですか?」
「私と樹が付き合えるようにお膳立てしてよ!」
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