breath
「俺の事を恨んでいた?」
私の心を見透かすように言う樹さん。私は縦にコクンと頷く
「そうだろな」
儚く笑う樹さんの姿に寂しさを感じる
「過去の事を、どう取り繕っても元に戻すことはできない。俺に今できることは、これから明日美を幸せにする事。だから、それを見て欲しい」
躊躇うこともなく、言う樹さん。2年前とは違う力強さを感じる。この強さは何処から来るのだろうか?
今の樹さんは自信にみなぎっている?そう思うの、私だけかもしれない

その日も、樹さんは私を抱く
私の全細胞に彼を刻み込むように
彼は何度も私の耳元で「愛してる」って囁いてくれる
私はその言葉を子守唄にして眠りについた

目が覚めると、樹さんの姿はなく、時間は10時過ぎ
「明日、仕事だもんね」
そう呟いた私は左手の薬指の指をジッと見る
この幸せは、ずっと続くの?

次の日の朝、マンションの駐車場で社長を待つ
樹さんの車はないのでもう出勤したのだろう
貰った指輪はつけていない
さすがにお揃いは気が引けるから
仕事中はほとんど会う事もないし、バレないだろうとたかをくくっている私

社長がやって来て車に乗り込む
「金曜日の前田さんの事は申し訳なかった」
と言う社長。私には前田さんの実家に行った事を話してくれるのかと思っていたけど、一切社長がその事を口にする事はなかった
「明日美は本社に戻りたくはないか?」
「えっ、どうしてですか?」
「病気も治っているし仕事も本社にいた時よりスキルアップしている。今の君なら、どこにやっても恥ずかしくない」
「私はずっと社長の元で働きたいと思っています」
そう言い、いつもの営業スマイルをして、スケジュール確認を始める

社長はなぜ私にそんな事を言うのだろう?不安を覚える
そして何か嫌な予感がするのは気のせいだろうか?
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