breath
相変わらず返事ができない私
孤独な自分を哀れんで泣いていたなんて口が裂けても言えない
「苦しいことがあったら俺が受け止めるから・・・何でも吐き出して」
樹さんのせつない声が彼の胸から伝わってくる
その言葉だけでも今は嬉しかった
私は樹さんの鼓動を聞きながら居心地良さを感じる
樹さんの胸はいつまで私のものなのだろうか?
タイムリミットがある
いつか誰かに取られるのはわかっているけど
今だけは私だけのものと思っていいですか?


次の日からは普通に出勤
いつもと違うのは社長ではなく樹さんの車で出勤したこと
樹さんが社長に説得したとか
朝一の日課のスケジュールの打ち合わせができないのが残念だけど、社長が決めた事だから仕方ない
朝食は樹さんが作る。同居生活も二年前と変わらない
あの頃と一つ違う事は寝室が違うこと
たぶん樹さんは私に同情している
それに伴う同居だと思う

会社に到着
一緒に歩くと周りの人がニヤニヤしながらこちらを見ている
昨日のショッピングセンターの事もあるし、噂が広まるのは時間の問題
エレベーターの降りる階が違うので、そこでお別れ
樹さんは「じゃあ」と言い別れ際に軽く私の手を握って降りていった
社長室に行くと社長はもう仕事を始めている
いつもより早く出勤したのだろう
私がいないほうが、社長のペースで仕事ができるのかも
そう思うと今まで出勤を私に合わしてくれた社長に申し訳なく思う
「おはようございます」
「おはよう」といつも通りの挨拶
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