breath
懐かしい樹の香り
私があの話を持ち出したら私達の仲はたぶん終わる
ということはこの抱擁が最後
彼の香りを身体中に吸い込み深呼吸
身体が離れ視線が合う
私の事をどう思っているのだろう?
すごく気になる
「なぜ嘘をつくんだ?」
怖い顔で樹が言う
嘘?私は嘘なんかついていない
ついているのは樹じゃないの?
何も返事をしない私に苛立つ樹
「山下に彼氏と別れそうとか何でそんな事を言うんだ?」
初めて見る怒っている樹にたじろいでしまう
「そんなことを言って男の気を引きたいのか?」
「嘘じゃない。本当の事」
「何を言っているんだ?別れたいのか?」
「別れたいもなにも私見たのよ」
「何を言っているんだ?俺は何もやってない」
「それに連絡だって全然取れないじゃない。何度連絡したかわかっている?」
「明日美、落ち着け。何を言いたいのかわからない」
「わからないって。何でしらばっくれるのよ。あんな事をやっておいて!」
私は引き寄せられた腕を振り払い樹の胸を叩く
何でここまで苦しめているのに私を責めるの?
悪いのは樹なのに
どうして?
悔しくて
情けなくて
自然と涙が溢れてくる
そんな私の両手を防ぎ抱きしめて止める樹
狡い
子供じゃあるまいこんな事ぐらいで私の怒りは収まることはない
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