breath
「ルール違反も何もあのマンションは加藤本家の私物。明日美の荷物も本来だったらサッサと運び出さなければいけないのに何もしないで許してもらえたのは、俺が社宅で借りていることになっているから。その事は理解できるな」
「はい」
「匠さんから俺に相談があったんだ。元妻の鈴香さんがどこで調べたのか知らないが夜遅くマンションの前で待っているって」
「それって復縁を迫っているとか?」
「内容はわからないけど、その日はタクシー代を渡して帰したって聞いている。自分の部屋には入れたり泊まらせたくない。それで俺も明日美の件で寝泊まりは実家でしていたから全く社宅を使っていないから万が一の時そこに泊めたいって相談があったんだ」
あのベッドのを利用したのは鈴香さん
あの時専務と電話で話していたことも合致する
「そうですか・・・」
「だから直接見た訳ではないから断言できないけどたぶんベッドを使用したのもピアスを置いて行ったのも鈴香さんだと思う。これで俺への疑いは晴れた?」
樹の言いたいことは理解できた
あのベッドの後を目撃した時、樹じゃないかもしれないという思いもあった
それは私の願いとか希望だけではなく、根拠のない事実があったから
樹の部屋から専務がいつもつけている香水の匂いが鼻を掠めた
そして目に映る情事の後
もしかして専務がて疑いがあったのは事実
でも認めたくなかった自分がいた
専務は私に対して優しい言葉をかけたり、口説いたりするのに他の女性を抱く現実を認めたくなかった
私の女の性
私が一番でいたい我儘
私は狡い
狡過ぎる
私はコクンと頷き「ごめんなさい」と謝るしかできなかった
結果的には樹と専務の二人を天秤にかけている
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