breath
しばらくしてノックの音が耳に入る
一瞬、樹?
って思ったけど違うことを祈る
もし突然入ってきたらどう接して良いかわからないから
部屋に入ってきたのはお伯父さんだった
少しホッとする
伯父さんの話によると私の事を考えて帰って欲しいとは言ったものの、自分も覚悟をしてここに来ているから会わしてくれと。もし、今日がダメでも会ってくれるまで何度でも来るからと引いてくれないとのこと
「私の意見なので、聞き流して欲しいのだが」
伯父さんが前置きをして、私の顔をじっと見て言う
「一度、会ってみたらどうかな?明日美の気持ちもわかる。ただ彼も必死になって探していたようだし。結婚も考えたことがある人なら、最後ぐらいけじめをつけて終わりを告げた方が良いと思う。お互いのために」
伯父さんの言うこともわかるし、正論だと思う
ケジメをつけていないのは私で
もし会えばこれが本当に最後なんだ

最後という言葉が私の胸を打つ
突然訪れる最後と、自分が決めた最後の衝撃のダメージ度ははるかに違う
それを想像するだけでも辛すぎ
胸がズキッと痛んで目から涙が浮かぶ
私は咄嗟に下を向いてハンカチで涙を拭いたけど、伯父さんはそれを見逃さなかった
「彼は良い青年だね。礼儀も正しいしブレていない。一度キチンと話をした方が良いと思う。結果はどうなろうとも、話をしないと何も進まないよ」
「わかりました」
私は鼻をすすり伯父さんに誘導されるがままに応接室へ
深呼吸をしながら
会ったら何を話す?
逃げたことを謝る?それとも謝らない?
自分の意見を突き通す?
素直に樹の言葉を受け入れる?
樹は私に会って何を言うんだろう?
探しにきたこと?
それとも別れ?
いろんなことが想定されるが、どれも想像であって答えではない
私は伯父さんに促されるまま応接室に入った
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