大事にされたいのは君
「…悪化してない?」
途中から退場していった瀬良君を見送った後、未だに隣を歩いてくれる三好君に言われて、自覚した。やっぱりそんなに酷い有様だったのかと。
「…な、」
「…な?」
「なんでだろう……!」
あまりにもショックだったせいで無意識に三好君に泣きつこうとする自分がいたけれど、三好君がきっぱり制した。「しっかりしなよ」と。
「あれだけ言い切っておいて」
「…返す言葉もないけど、一応前進したつもりではあった」
「どこが」
じとりとした目線が私へと送られる。
「話して貰えたし、一緒に登校した」
「それって普通でしょ」
「? だったら良い事じゃないの?」
「……」
前へ視線を戻した三好君から、もう私への興味が失われた事が感じ取れた。
「特別じゃないって事は、吉岡さんにとって良い事なんだね」
投げ捨てるように言うと、三好君は行ってしまった。残された私はただ、同じように残された言葉を反復する事しか出来なかった。
良い事、良い事…だって普通よりも悪い所にいたのだから、普通になれるのは良い事でしょう?
「そういえばさ、最近由梨ちゃん三好と仲良くない?」
「今日朝練の時一緒なの見てさ」と、授業の合間の時間に朋花ちゃんに何気無く聞かれた。私と三好君が仲が良い…
「…そんな事無いような気がする」
「気がするって」