大事にされたいのは君
と、断る事に決めて迎えた翌日の朝。校門に待ち構えていた彼に早速その話を持ちかけてみると、キョトンとした顔で「だから何?」と返された。ので、キチンと断る形を取ると、「俺の中で吉岡さんが一番なのは変わんないから正直吉岡さんの気持ちはどっちでもいい」なんて宣言されてギョッとした。どっちでもいい、じゃないだろう。そんなのもうどうでもいいって事だろう!
「瀬良!やめて馴れ馴れしい!由梨ちゃん嫌がってる!」
「長濱はこれから部室だろ?早く行かないと遅刻すんぞー」
「言われなくても分かってるわ!そんなだと由梨ちゃんに嫌われるんだからね!」
「もう嫌われてますー、でも俺が好きだから良いんですー」
その自分と私のいざこざを隠そうともしない姿勢のおかげで、すっかり瀬良君と私の間柄は周知のものとなってしまった。あの瀬良を拒否る女的な立ち位置は辛い。そしてクラスでの唯一の友人朋花ちゃんもあまり教室に居ない為、私と瀬良君が挨拶を交わす仲だったという事すら知らない状態からの今なので、だいぶ反応が鋭い。…でも、私の事を責める方ではなく味方に回ってくれた事が本当に何より有り難かった。周りにはだいぶ顰蹙を買ってるから…
「吉岡さん行こ、長濱が居るとなかなか話せないからさ」
朋花ちゃんが私と彼の事を知らなかったように、私も瀬良、長濱と呼び合う二人の関係を知らなかった。休み時間は部活関係の事に駆り出させる事が多い朋花ちゃんが瀬良君と話す所を今まで見た事が無かったけれど、どうやら二人は同じ中学出身らしい。そして今私を挟む事で友人としての会話が増えたらしい。
「朋花ちゃんも居て三人の方が、話す事多いんじゃないかな」
それは嫌味とかでは無く、ただ単純に思った事を言っただけだった。二人のフランクな感じを見ていると仲が悪かったとかでは無さそうだし、割とやり取りも楽しそうに見える。それにその方が私も肩の力が抜けるというか、緊張感無く頷くだけで会話の中にいられていいんだよなぁ、なんて思ったりしていた。…しかし、彼からの返事は思いもしないものだった。
「長濱が居る時に俺は要らないでしょ」
「…ん?」