Vanilla
「お前、杉森と付き合うわけ?」

じいっと見つめられたら、何故か怖くなって、私は目を伏せた。

「こ、これから、そうなるかも、しれないじゃないですか……」

「付き合って無いならどうでも良いじゃん」

ハイ?
それは私の恋はどうでも良いってこと……?

苛々が込み上げてきて目線をバッと上げると、朝永さんの視線はまたカレーに戻っていた。

話を聞きなさいよ!

「どうでも良くなんか無いです!」

私はスプーンが曲がりそうなくらい握り締めながら苛々を放出した。

「でも置いてやってるだろ」

うっ!
それを言われたら、何も言えない!

「とりあえずキスは二度としないで下さいっ!」

「初めてじゃあるまいし」

初めてだったのよ!

でもそう言い返したら馬鹿にされそうだし、なにより何を言ったって私のファーストキスは返ってこない。

こんなにも私は苛々しているというのに、目の前で黙々と呑気にカレーを食べ続ける朝永さん。

「お前は俺の奴隷なわけ」

と思ったら、顔をパッとこちらに向けてサラリと言った。

そうですね。
置いてもらっている身だから、もう何も言いませんよ。
そうすれば良いんでしょ!?

「ご馳走様」

苛々していたら、目の前から聞こえてきた言葉に驚きすぎて苛々は何処かに飛んでいった。
朝永さんは立ち上がるとシンクにお皿とコップを片付けた。
明日は絶対に空からブタが降るわと再び思う私。

私も食事を食べ終わるとシンクにお皿を運び、お皿を洗う。
洗い終えると、この後は掃除もしなきゃいけない。
まだ気を休められない。
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