Vanilla
「まぁ、そんなとこ。食べろ」

太ると言っているのに、アイスを掬って私に差し向けた朝永さん。

口の端を上げる朝永さんに腹が立った。
私だけ振り回されているこの状況に。

私はスプーンを持っている朝永さんの手を両手で掴むと強引に朝永さんの口元へと向けた。


「朝永さんが食べて下さいっ!」

私が訴えると朝永さんはフッと笑い、スプーンに口を近付けてパクリ。


「美味いな」

私は目の前でアイスを味わう朝永さんに釘付けになってしまう。

朝永さんって無駄に顔が整っているから、どんな仕草にもドキリとしてしまう。
ただアイスを食べているだけでも。


「やっぱり、欲しいのか?」

私は見惚れていたせいで、両手を離すのを忘れてしまっていた事に気付く。
そのせいで朝永さんは私が欲しがっているのかと勘違いしたらしい。

バッと両手を離す。

「もう結構ですっ」

熱が引いてくれなくて、斜め下を見ながら返した。
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