Vanilla
「いきなり何するんですかっ!」

スプーンが抜き取られると私は声を荒げる。


「ご褒美だよ。俺にもっと忠実になるように」

細い目、片方だけ上がる口の端。


「不器用な俺が好きなんだろ?」

次に弧を描いた口と楽しそうな顔で笑う朝永さんに胸の奥が甘く疼くと同時に頭に過ぎる。

貴方、好きな人いるのに何でそんなこと言うの?


「あれは演技ですっ!それよりこんなハイカロリーな物を毎日食べたら太っちゃう!」

私は話を逸らしたくて、アイスの話題に逃げた。


「もう少し太れ。お前は細すぎる」

二度も抱かれた人にこんな事を真顔で言われたら、どう反応すれば良いか困る。


「……私を太らせるためにアイス買ってるんですか?」

上目遣いで小さく返したのが精一杯。
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