Vanilla
今、電話したら朝永さんは出てくれるだろうか。
メールしたら返事をくれるだろうか。


『朝永君、今日その彼女と会ったりするんじゃない?』

そこに再び穂香さんの言葉が過ぎる。


私は偽物の彼女。

もし、忘れられない彼女と本当に過ごしていたら……、

返信なんてあるわけない……。


『ポツポツ……』


その時、嫌な雨の音が耳に届いてきた。
どうやら雨が降り始めたらしい。

あの豪雨の日、私に電話しろって言ってくれた。

でも、出てくれなかったら……


頭の中をグルグル回る不安。

雨は私を不安にしかさせない。
< 266 / 566 >

この作品をシェア

pagetop