Vanilla
ワケが分からないし、頭はのぼせすぎてしっかり回転してくれない。

キスされ続けて、煩い音を出し続けている心臓は痛いと感じるほど。

でも一つだけ分かるのは、逃げなきゃいけないってこと。

私は再び抵抗するべく、下へと体重を掛ける。

だが朝永さんも一緒にズルズルと下についてきただけ。

床にお尻が着いても止まらないキス。

朝永さんの舌から逃げても、すぐに捕まる。


「ヤダ……」

離してくれないことに、また涙が溢れてきて、キスされながらも拒絶の言葉を出した。

それなのに離れてくれない。


「泣くな」

私を泣かせてるのは貴方ですよ。

肩を揺らして泣きながら目の前の朝永さんを睨むが、また唇が重ねられて私は身体を竦めた。

それは先程までの荒々しいキスとは違った。

何故か優しいキス。

まるで私を宥めているような。
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