Vanilla
突然洗面所の扉が開いて、朝永さんが何も無かったかのように嘘みたいに挨拶をしてきた。

「服、さっさと着ろよ」

そして最初から最後まで無表情の顔のまま、扉を閉めた。

私、今日もバスタオル一枚の姿で、驚きすぎて固まっちゃってたんですが、それについて謝罪も無いんですか?
それにまだタオル巻いていたから百歩譲って良いとして、私が真っ裸な可能性もあったわけですけども、それより昨日のキスについての説明はしてくれないんですか……?


いつも通りすぎる朝永さんにポカンとなった。


私は服を着て、髪を乾かし、リビングに行こうとした。

洗面所の引き戸を開けると同時に朝永さんもリビングの扉を開いた。

私を真っ直ぐ見つめる瞳。


もしかして、昨日の話をしてくれるの……?


「電話」

「え?」

キョトンとさせられると、携帯を差し出された。
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