Vanilla
そして月曜日。
恋人になって初めての出勤。

それなのに朝永さんはいつも通り。
前を向いてスタスタ歩いて行く。

しかも会社の駅に着いてもスタスタ歩いていく。
あの演技をしていた時の方が恋人ぽかったのは何故だ。


「朝永さん、手を握ってくれないんですか?前は握ってくれたじゃないですか」

朝永さんは此方をチラッと一瞥するとまた前を見た。

「もうする必要無いし」

素っ気無い返事が返ってきた。
それは演技をでしょ?

「私はしたいです……朝永さんと本当に恋人になれたって実感したいから……」

しゅんとしてみせると、やけグソ気味に手をバッと掴まれた。

真っ赤な耳と恥ずかしそうな顔。

優位に立った気分。

面白い。

それよりも可愛い。
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