Vanilla
確かにあれは朝永さんらしくない行動だった。

愛佳ちゃんは私達の恋のキューピッドらしい。

それよりも愛佳ちゃんの言ったことは本当なんだろうか。

「朝永さんは私と居ると落ち着くんですか?」

私は確認するために繋がっている手を引きながら問い掛けた。

朝永さんは何も言ってくれなかったけれど、横顔と耳が真っ赤だった。




今日、会社では異変があった。

まず、いつにも増して物凄く視線を感じた。
朝永さんに無理矢理恋人役をやらされた初日を彷彿する程。

今、食堂で朝永さんと愛佳ちゃんと昼食を食べているのだが、視線しか感じない。


「あっら〜、つぐみちゃん、今日はお弁当じゃないの?」

社食のアジフライ定食を食べている私に意味深にニヤニヤしている前に座るハンバーグ定食をつついている愛佳ちゃん。

「朝永さんが寝かせてあげなかったせいかしらねぇ」

「……」

私の隣にいる朝永さんは愛佳ちゃんの弄りを完全無視してアジフライ定食を食べている。

私も恥ずかしくて無言で箸を進める。
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