Vanilla
「邪魔したくなっちゃったのは何で?」

微笑を浮かべながら小首を傾げて、顔を下から大きな瞳に覗かれ、鼓動が波打った。

俺の気持ちに気付いていて、俺に言わせようとしているなら、相当な小悪魔だ。

だが不器用で口下手な俺はここまで言われても言えない。

逃げようと顔を逸らそうとしたら、両頬を掴まれた。


「朝永君のそういう可愛いところが好きよ」

目を細めた穂香からキスをされた。

夢かと思った。


俺達はそれをきっかけに付き合い始めた。


「同じ職場だし、仕事がやりづらくなったら嫌だから、付き合ってるのは秘密にしておこう?」

俺は穂香の提案に頷いた。
俺は他人に自慢したり見せびらかしたりする人間じゃないから。
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