秘/恋
……よん……



秋は足音が聴こえたと思ったら、
次の瞬間には通り過ぎているものらしい。

まだゆるいものの、油断すれば凍りつきそうな風に、あたしは亀みたいに首を縮めた。

授業中の屋上は、当たり前に無人。

教室に残してきたマフラーに後悔しつつ、あたしはちゃらちゃら、手のひらの鍵を玩んだ。

朝、斜め45度前に傾いだあたしを見て、なぎは無言で屋上の鍵を貸してくれた。

ひとの心に聡い友人に感謝。

かくしてあたしは、なにも考えずにぼーっとするふりをして、ごちゃごちゃ答えの出ない問いをこねくり回す、ろくでもない時間を満喫しているワケだ。

……不毛。



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