秘/恋
「なぎ?」
「九桐さん?」
都倉サンが、ちょっと顔をしかめる。
「都倉? 荘野のバカ、物理科の呼び出しくらってるんだけど、いる?」
「へ!?」
ぴょこん、とパイプ椅子から立ち上がったのは、あたし。
前回の物理の試験結果は、驚きの0点。
物理はあたしの鬼門で、呼び出しを喰らう理由は星の数ほどある。
天敵に遭った小動物みたいに、怯えたって仕方ない。
「心当たりあるのね?」
あたしのあからさまな反応に、都倉サンがくすっと笑った。
生徒会屋さんならさぞ、成績も優秀なんだろう。
あたしは赤面するしかない。