秘/恋
「明姫、よく寝てた」
「……あたし、どれくらい眠ってた?」
「一時間くらいだな。途中、何回か海が見えたよ」
「ッなんで起こしてくれなかったの? あたしも見たかった」
「起きなかったんだよ、お前が」
携帯を指先に吊り下げた明良が、薄く笑っている。
銀色で、きらきらして、でもシンプルな筐体。
ぴかぴか、小さなライトをまたたかせていた。
無言で差し出した手のひらに、明良はそっと、その機械の塊を載せてくれる。
明良の視線を横顔に感じながら、開ける。
「げッ」
着信履歴は、恐ろしいほどひとつの名前で埋め尽くされている。
メールはといえば、こちらも同様。
画面いっぱいに、おなじ名前。名前。名前。
――九桐なぎ。九桐なぎ。九桐なぎ。
ついでに、出ないあたしに怒り狂っているなぎの顔。