秘/恋



言葉を口にした、瞬間。

ぐるりと身体が回って、次の瞬間、あたしは、明良の腕のなか。

ぎゅっと抱き締められて、その腕の強さに、明良のこころの行き場のなさを知った。


あたしたちは半分だから。

ふれればふれるだけ、気持ちが伝わってしまう。


――染まってしまう。


「明姫が、好きだ」


掠れたささやきを耳に落とされて、胸がぎしぎし、狭くなる気がした。


――お互いだけが、お互いを守る存在。


じいさまの言葉。

じいさまの呪い。


「だから、俺は、明姫を守れない」


明良は、あたし以上に悲痛な声で、嘆く。


――いやだ。哀しまないで。泣かないで。


あたしのこころは、勝手に暴れる。

守れるのは、お互いだけのはずなのに、あたしはバカみたいに、口を開けて明良を見上げてる。



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