秘/恋
「……なぎに、代わりに怒られておいて」
「へ? 明姫?」
樹也のまぬけな声を無視して、素早くぱっと、指をほどいた。
あたしは、一歩、踏み出す。
明良は真っ黒な瞳、潤んで白目にくっきり浮き上がる綺麗な瞳で、あたしを見つめている。
手を伸ばしても届かない。
だから、もう一歩。
「明姫、好きだ」
明良の声は揺れて、どこか不安そう。
【好き】って言葉に魔法が宿っているみたいに、すがるように響かせる。
もう、一歩。
指先がふれたら我慢ができなくて、明良のブレザーを引きむしるように抱き寄せて。
――むさぼるみたいに、キスをした。