秘/恋
「あきちん、あきちん。
志望校、決まってる?」
後ろから、なぎが背中をつついてくる。
「ん~。まあウチから通えて、奨学金を出してくれそうな学校なら、なんでも」
ウチの高校は、ほどほどの進学校で、九割以上の生徒が進学を希望している。
後は、どこまでレベルを上げるか。
もしくは地方にロマンを求めるか。
違いは、それくらいだ。
「なぎは?」
「もう決めてる」
迷いのない、くっきりとした口調でなぎは答える。
決めたのなら、それがどこだろうが関係ない。
順当に段階を踏んで、再来年の春には、なぎはそこの学生になっているのだろう。
簡単に、想像ができた。
……振り返ってちょっと、
ゆるい自分が情けない。