once again
「ひどい。そんな言い方なさらなくても…」

急に泣きはじめた。
俺そんなに悪い事したのか?

「と、とりあえず、ラウンジに行きましょう」

泣いてる彼女を連れて、ホテルにあるラウンジに連れていった。

面倒くさいな、こいつ。
本音が出そうになる。

「蓮さん、私を少し知ってもらってから、でもいいんです。答えをすぐに出さないで」

ラウンジに着くなり、そう言った彼女。
泣いてたんじゃないのか?
涙は?

やられた。

「いや、君を知るも何も、特定の…」

「知ってから気持ちが、変わる事もあるでしょう?」

一向に話がまとまらない。
平行線のまま…
車で来ていた事も忘れて、酒を飲んでしまっていた。
後から高瀬を迎えに行こうとしていたのに…

「専務」

「え?あ、匠…」

「会場にいないから探しましたよ。これ」

ラウンジに現れた匠が、ホテルのカードキーをカウンターに置いた。

「社長からです。泊まっていいと」

耳打ちしてきた。

「チッ…」

「鏑木社長からのお許しもある、とか。任せましたよ」

お嬢さんに気付かれる前に、カードキーを胸ポケットにしまった。

匠は、じゃあ!と俺の肩を叩いて出て行った。
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