once again

蓮side

高瀬の腕を掴んだ俺は、そのまま彼女を会社の外に連れ出した。
高瀬はどこに連れて行かれるのか、不安な表情を見せていたが、俺は無言で車に乗せた。
そして、自分のマンションまで連れてきた。
ここなら、誰の邪魔も入らない。

部屋に入るなり、彼女を後ろから抱きしめた。

「高瀬、お前だろ?高瀬だって言ってくれ」

願いも込めていた。
君であってくれ、と。
抱きしめた腕にさらに力が入った。

高瀬は、専務と呼ぶだけで、答えはしなかった。
違うのか?そうだと答えが聞きたかった。
俺は彼女を振り向かせ、腕の中に閉じ込めた。

迷いがある彼女の手が、俺の背中を強く抱いたのが分かった。
高瀬と視線が絡み合った。

そして、その視線の先にある唇が重なった。

「高瀬…好きだ」

自然と出ていた。
やっと言えたこの言葉が…
それでもまだ、高瀬からの返事がなかった。
泣くだけだった。

脳裏に、匠から聞いていた見合いの3文字がチラついた。
もしかして、もう遅かったのか?
俺の手の届かない所に行ってしまったのか?

「……お前を手にする事は遅いのか?」

返事は返ってこなかった。
ただ泣き続ける高瀬を前にして、これ以上は無理だと思った。
苦しめてはいけない…
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